この事例の依頼主
20代 男性
相談前の状況
私は,美容院などを経営するA社に在籍していたのですが,身に覚えのない横領などの容疑で責め立てられた挙げ句,懲戒解雇処分を受けるとともに,A社代表者による暴行により傷害を負いました。到底納得することができないのですが,どのように対応したらよいのでしょうか。
解決への流れ
解雇通知書すら交付してもらっていなかったので,弁護士に依頼し通知書(内容証明郵便)を発送してもらい,解雇通知書を受領することができました。他方で,A社からは私に対し横領などについて損害賠償を請求するとか刑事告訴するといった内容の通知書が届きました。そのため,弁護士からA社宛てに,そちらが刑事告訴に及ぶならこちらも対抗上A社代表者による傷害事件について刑事告訴するということを通知するとともに,労働問題の解決を図るべく雇用契約上の地位確認などを求めて労働審判を申し立てました。その労働審判手続の中で,A社が懲戒解雇処分を撤回し合意退職として扱うこと,一定の解決金を支払ってもらうこと及び双方刑事告訴などに及ばないことなどを約束して無事解決を図ることができました。
使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておかなければならないとされています(最三小判昭54.10.30民集33巻6号647頁,最二小判平15.10.10裁判集民211号1頁)。また,就業規則が法的規範としての性格を有するものとして拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続がとられていなければなりません(前掲最二小判平15.10.10)。本件のA社においてはそもそも就業規則が制定されていなかったことから,懲戒解雇処分が有効になりようがないことを主張しました。また,従業員が悪質性の高い行為に及んでなどおらず,ひいては懲戒解雇処分が不当であることを主張・立証しました。こうして,解決金の支払などにつなげることができました。