この事例の依頼主
70代 男性
相談前の状況
土地を賃貸している地主さんからの相談です。4か月前に借地人が亡くなり、その相続人と借地契約を終了しようとしたところ、相続人らが全員相続放棄をし、どのように処理すべきか悩んでおられました。そこで、相続財産管理人の選任申立てをし、相続財産管理人と借地契約を解消する方法を提示させて頂きました。ただし、4か月分ほどの未払いの場合、一般的に債務不履行解除は困難であり、借地権価額のうち相当額の金銭支払いを求められることもそれなりに覚悟する必要がある、そうなった場合、本件では借地権を終了させることに不利益を受ける人はいないため、無償か、相当減額された額での交渉をすべきことをアドバイスさせて頂き、家裁に申立てを行いました。
解決への流れ
選任された相続財産管理人の弁護士と交渉し、本件では借地権について利害関係者はいないことから、無償で借地契約を解消することが適切であることを主張したところ、相続財産管理人も状況をよく理解されたようで、今後、債権者が現れなければ、無償での解約で進めるということになりました。そして、債権者が現れなかったことから、相続財産管理人との間で借地契約を解約し、建物については未払い賃料の支払いに代えて地主が所有権を取得する(代物弁済)との合意書を交わし、無事解決することになりました。借地の対象たる土地は都心の好立地にあり、借地権の価値もそれなりに高額であり、依頼者さんも金銭の支払いを求められないか非常に不安になっておられていたので、無償で借地契約を終了できたことに大変満足されました。
賃料の未払いを理由とする借地契約の債務不履行解除は、建物の場合と異なり、他に信頼関係の破壊となる事情がない限り、6か月分ないし1年分の未払いがあることが必要とされています。同解除ができない場合、借地権相当額の一定割合を地主が借地人に支払うことが必要になります。そして、かかる理屈は、借地人が死亡し、相続人が存しない場合にあっても同様で、実務では、相続人死亡時までの滞納分を考慮のうえ、債務不履行解除の可否を検討することとされています。もっとも、本件のように、借地権についての利害関係者がいないのに、地主が相続財産に多額の金銭を入れなければならないというのは、明らかに不合理です(最後に国庫に帰属するのは清算という制度の設計からであり、国自身が利害関係を有しているのではありません)。一般的に通用していると考えられる運用であっても、具体的状況下、妥当すべきなのかよくよく検討することが重要です。