犯罪・刑事事件の解決事例
#労働条件・人事異動

整理解雇の事件で労働審判前に解決金302万円を支払ってもらうことで示談が成立したケース

Lawyer Image
徳田 隆裕 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人金沢合同法律事務所
所在地石川県 金沢市

この事例の依頼主

40代 女性

相談前の状況

私のクライアントは、石川県内の葬儀会社に勤務していたところ、代表者から、あらぬ疑いをかけられて、突然解雇させられてしまいました。あらぬ疑いとは、クライアントが不倫をしているというものでした。クライアントは、不倫をしておらず、抗議しましたが、代表者は、クライアントの言い分に耳を傾けることなく、解雇を断行したのでした。この解雇に納得のいかないクライアントは、会社に対して、解雇理由を明らかにするために、解雇理由証明書の交付を求めました。相手方の会社から交付された解雇理由証明書には、「会社業績不振のため、人件費削減の措置のため」と記載されており、クライアントが会社から口頭で聞かされた、不倫をしているという解雇理由とは異なるものでした。会社から、口頭で聞いていたのとは異なる解雇理由が主張され、クライアントは、ますます納得がいかなくなり、私に法律相談をされました。

解決への流れ

クライアントが不倫をしていたことを理由とする解雇は当然に無効になりますが、会社が主張してきた、業績不振を理由とする解雇は、簡単に無効になるとは限りません。業績不振を理由とする解雇は、整理解雇といい、整理解雇は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性の4つの要件(要素)を総合考慮して、無効となるかが判断されます。クライアントが解雇された時期が、ちょうど、新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期なので、三密を避けるために葬儀が減り、葬儀会社の売上が減少していることが予想されました。また、会社から開示された決算書を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大の前から、会社の売上が落ちており、さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が、売上の減少に追い打ちをかける状況でした。そのため、①人員削減の必要性は認められそうでした。もっとも、相手方の会社の決算書を税理士に分析してもらったところ、外注費と接待交際費を削減できる余地があることがわかりました。また、相手方の会社では、希望退職の募集がされておらず、雇用調整助成金を利用していませんでした。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、雇用調整助成金が拡充されており、業績が悪化しても、会社は、労働者を解雇するのではなく、休業手当を支払って、休業させて、雇用を維持することが求められているのです。そのため、相手方の会社は、②解雇回避努力を尽くしていなかったのです。また、クライアントは、相手方の会社が資金繰りに苦しんでいた時に、一時的に自分の預金をおろして、会社に貸付をして、会社の資金ショートを防ぐなどの貢献をしており、クライアントを人員削減の対象とすることに合理な理由はありませんでした(③の要件を満たさない)。そして、解雇理由が途中で変わるなど、相手方会社は、解雇の理由について、充分な説明をしていませんでした(④の要件を満たさない)。

Lawyer Image
徳田 隆裕 弁護士からのコメント

そのため、相手方の会社は、①の要件を満たすものの、②~④の要件を満たさないので、整理解雇は無効になると考えました。そこで、労働審判を申し立てたところ、相手方は、期日の1週間前に解決金を支払うので、裁判を終わりにしたいと白旗を挙げてきました。クライアントの1年分の賃金から、退職金と解雇予告手当をひいた、302万円を相手方会社に支払ってもらうことで示談が成立しました。整理解雇の事案では、会社の決算書をていねいに分析して、労働者に有利に使えるところをピックアップしていくことが重要になります。裁判が始まる前に、相手方の会社から、クライアントの納得のいく解決金を回収することができ、クライアントに満足いただけました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今後、整理解雇が増えていくことが予想されますので、参考になる解決事例として紹介します。