犯罪・刑事事件の解決事例
#婚姻費用

お客様に不利な状況にあった婚姻費用分担調停を途中から代理し、ポイントを押さえた主張立証活動により有利な結果に導く

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加藤 尚憲 弁護士が解決
所属事務所東京西法律事務所
所在地東京都 杉並区

この事例の依頼主

50代 男性

相談前の状況

1 婚姻費用分担請求奥様との離婚を希望されたお客様が、最初は自分で離婚調停を申し立てたところ、奥様に弁護士が代理人として付き、逆に婚姻費用分担調停を申し立てられてしまいました。2 婚姻費用分担額の算定基準婚姻費用分担調停では、夫婦双方の年収や、子供の有無・年齢を基準に婚姻費用が算定されます。本件では、「夫(お客様)の年収をいくらと見るべきか」が主な争点となりました。というのも、お客様は2つのご職業をお持ちだったのです。3 会社への貸付お客様は、電機会社で役員を務めながら、ご自身でお父様から引き継がれた電子部品製造会社を経営されていたのですが、この会社がここ数年継続して赤字のため、お客様は、勤務先から受け取る給与手取り額の半額近くを、ご自身の会社に月々貸し付けていました。従って、お客様の可処分所得は、勤務先の給与よりもはるかに低かったのですが、奥様は、「貸付を無視して勤務先から受け取る給与の額のみで婚姻費用の分担額を決めるべきだ」という主張をしていました。しかし、奥様の主張通りにすると、婚姻費用分担額がかなり高く設定されるため、お客様は自分の生活費用を賄うことさえできなくなってしまい、お父様の代から続く会社を畳まざるを得ません。4 ご相談お客様は、調停委員に実情を伝えましたが、奥様も主張を譲らず、話し合いは平行線をたどりました。困り果てたお客様は、ここで初めて当事務所にご相談にいらっしゃいました。(本件は、お客様のプライバシーの保護のため、意図的に実際の事件と異なる箇所が存在します。ご了承下さい。)

解決への流れ

1 当初の状況最初のご相談で状況をお聞きし、当日正式なご依頼を頂きました。その直後、私が代理人として調停期日に出席しましたが、当初は調停委員すら当方の主張に余り耳を貸そうとせず、ただ奥様の言い分をこちらに伝えて来るだけでした。担当裁判官も、同様に「貸付額は原則として分担額の算定には影響しない」との見解でした。ほぼ八方塞がりの状態であり、もしお客様がこのまま自分で調停を進めていたら、到底お客様の主張が採用される見込みはありませんでした。2 逆転への手掛かりしかしながら、私は裁判官の見解に納得しませんでした。そこで、私は裁判官に判断の根拠を尋ね、裁判官が重要と考えている事実を探った上で、お客様の主張を裏付けるべく、お客様に資料を揃えて頂き、裁判所に提出しました。これで、裁判官や調停委員に、お客様の主張をきちんと検討してもらえる土俵が整いましたし、議論を通じて裁判官が何を判断のポイントとしているかを掴むこともできました。3 審判へこの時点で、奥様は、婚姻費用の分担額について「月18万円」と主張していました。当方は、もともと「月10万円」の主張でしたが、上記の論理を展開しつつも、奥様に譲歩し、調停委員の示した「月15万円」を受け入れる意向でした。ところが、奥様の強気で頑な態度は変わらず、一切主張を曲げないどころか、交渉の最終段階になって「調停は不成立にして審判にして欲しい」と言い出しました。これには調停委員も閉口し、さじを投げた格好で審判に移行しました。私は、このとき密かに、調停委員よりも法律家である裁判官の方が、理詰めで説得しやすいと考え、早速準備にかかりました。4 準備書面と聴聞審判に移行した直後、第1回期日前に、私は裁判官との議論を通じて読み取った判断のポイントを踏まえ、これまでの主張を手短にまとめた準備書面を作成し、提出しました。これに対し、奥様からも反論の準備書面が提出されましたが、その内容は感情論が多く、裁判官の判断に影響すると思われる部分はわずかでした。第1回の審判期日では、奥様の聴聞(裁判官による事情の聞き取り)が行われました。驚いたことに、奥様本人は自分に不利な事実をそれと知らずに沢山語ってくれました。そこで私は黙ってメモを取り、期日後に再び準備書面を提出し、話の内容からお客様に有利な事実をくまなく拾い出して、なぜその事実がこちらに有利なのかを指摘しました。この際、私は相手方の書面に書かれた感情論は一切無視し、あえて反論しませんでした。感情論に反論しても、争いがひどくなるばかりで裁判官の判断は何も変わらないからです。2回目の審判期日は、お客様が聴聞を受ける番でしたが、私は、お客様が奥様と同じ失敗をしないよう、リハーサルを行うなど周到な準備をしました。その結果、聴聞を無事に終えることができました。5 成果これらの結果を踏まえて裁判官は見解を改め、奥様を強く説得し、会社への貸付額を収入から控除し、婚姻費用の分担額を「月14万円」とする案を勧め、その内容で合意に至りました。この数字は、奥様が目標としていた「月18万円」どころか、奥様が土壇場で拒絶した調停案の「月15万円」よりもむしろお客様に有利な内容でしたから、審判に移行したことで却って条件が良くなりました。

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加藤 尚憲 弁護士からのコメント

調停から審判に移行した際に、裁判官の判断のポイントを正確に掴みながら、感情論には取り合わずに冷静に主張立証を行ったことが功を奏しました。途中まで不利だった状況を逆転できて本当に良かったです。本件は若干遠方にお住まいのお客様だったので、毎月のように、朝早くから新幹線で遠くの裁判所に通いましたが、その苦労も報われました。