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野球部女子マネ、3.5キロのランニングをさせられ死亡…部活中事故の法的責任は?
2017年08月14日 11時32分

新潟県加茂市の加茂暁星高校で野球部員とともに野球場から学校まで3.5キロを走って戻り、意識不明になっていた女子マネジャーが8月5日、入院先の病院で亡くなった。

朝日新聞によると、普段女子マネジャーはバスに乗っているが、この日は監督が「マネジャーはマイペースで走って帰るように」と指示。倒れた直後に駆けつけたが、AEDは使用しなかったという。警察は業務上過失致死の疑いもあるとして、関係者から話を聞いている。

部活動中に部員やマネジャーが突然倒れて亡くなってしまった場合、顧問など学校側の法的責任はどうなるのか。学校問題に詳しい高島惇弁護士に聞いた。

新潟県加茂市の加茂暁星高校で野球部員とともに野球場から学校まで3.5キロを走って戻り、意識不明になっていた女子マネジャーが8月5日、入院先の病院で亡くなった。

朝日新聞によると、普段女子マネジャーはバスに乗っているが、この日は監督が「マネジャーはマイペースで走って帰るように」と指示。倒れた直後に駆けつけたが、AEDは使用しなかったという。警察は業務上過失致死の疑いもあるとして、関係者から話を聞いている。

部活動中に部員やマネジャーが突然倒れて亡くなってしまった場合、顧問など学校側の法的責任はどうなるのか。学校問題に詳しい高島惇弁護士に聞いた。

●生徒が死亡しても起訴に至らないケースの方が多い

部活動中に生徒が亡くなった場合、学校側に刑事責任はあるのか。

「刑事責任ですが、一般論としては監督につき業務上過失致死罪が成立する余地はあります。

顧問が業務上過失致死罪で起訴された事件としては、野球部が炎天下での部活動中、熱中症の発生を予防し、発生した場合には迅速かつ適切な措置をとれるよう指導監督すべきだったにもかかわらず、これを怠ったとして、罰金40万円を言い渡した事例(横浜地裁川崎支部平成14年9月30日判決)があります。

また、ラグビー部の合宿訓練において、部員が日射病で複数回倒れたにもかかわらず、医師の診察など格別の措置を取ることなく放置した結果、その部員を死亡させたとして、懲役2月執行猶予1年を言い渡した事例(東京高裁昭和51年3月25日判決)というのも存在します。

いずれも、熱中症に関する事案であって、顧問の注意義務違反と死亡との因果関係が比較的明確に存在しているものと理解できますが、全体としては、生徒が死亡しても起訴に至らないケースの方が多いのが実情です」

●民事では、死亡との因果関係を立証するのが難しい

民事責任はどうなるのか。

「民事責任として、顧問や使用者である学校に対し、死亡による慰謝料や逸失利益について損害賠償を請求することも可能です。

もっとも、民事事件においては、顧問の注意義務違反や死亡との因果関係について、原告である遺族にてある程度主張や立証をしなければなりません。とりわけ立証の点で困難を伴うことが多いかもしれません」

今回、ランニングして学校まで帰った野球部女子マネジャーが亡くなった。

「今回の場合、死因が低酸素脳症だったとのことで、何らかの原因による心室細動(心臓の心室で異常が生じ血液を全身へ送り出せない状態)が発生していた可能性はあります。

そして、心室細動の原因としては、心筋梗塞などの持病や先天的素因によるケースもありますが、心臓に異常が無い人であっても、脱水症状や激しい運動によって心室細動が生じるケースも複数報告されているようです。

そのため、仮に心筋梗塞などの持病や先天的素因が存在しなかったのであれば、ランニング時の速度や女子生徒の疲労状況、ランニング時の気温など諸般の事情次第では、ランニング以外に想定し得る原因がないとして死亡との相当因果関係を推認する余地はあります。

また、女子マネージャーに対し走って帰るよう漫然と指示した監督につき、注意義務違反を追及する余地はあるかもしれません(突然の指示であって女子マネージャーも準備していなかったであろう点は、注意義務違反の認定に際し考慮すべきだと思います)」

●呼吸が普段通りでない場合は、AEDを使うのが無難

監督は駆けつけたが、女性マネジャーにAEDを使わなかったという。

「AEDを使用しなかった点についても、事故発生後の迅速かつ適切な措置を怠ったとして、安全配慮義務違反を別途検討する必要があります。今回の場合、『呼吸は弱いけれどある』と判断したためAEDを使用しなかったと報じられていますが、呼吸が普段通りでない場合は、心停止を疑ってAEDを使用するのが無難だと思います。

そして、AEDは、ショックが不要だと判断した場合は作動しない構造になっているため、その使用によって事態が悪化する危険は通常ないと考えられますし、仮にAEDを使用しないのであれば、少なくとも胸骨圧迫(心臓マッサージ)による措置は講じるべきだったかもしれません。

本件においては、未だ明確になっていない事実関係が多く存在するため、監督や学校の法的責任を追及できるかどうかは今後の展開次第になります。

その上で、生徒の死亡という重大な結果が生じている以上、遺族への配慮という観点からも、学校が真相解明に向けて協力的な姿勢を示すことが極めて重要になるのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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